お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
手をお腹の前で揃えて、軽く頭を下げる。

『わかっているならいい。今後は気をつけろ』と言って許してくれないだろうか……。

そう願っていたのだが、「まだわかっていないのか」と、逆の言葉をかけられた。


どうやら焼き芋キャンディについて叱責するつもりはないようで、だとしたら、なにについて注意しようとしているのか……。


困り顔を専務に向ければ、彼は足を組み替えて、その膝の上に指を組んだ両手をのせた。

整った顔の眉間に皺を刻み、私を三秒ほど凝視すると、それからおもむろに唇を開く。


「『つまらないお坊っちゃま』で悪かったな。俺がお前の見合い相手だ」


それは昨日の私が、彼に事情説明した際に用いた言葉であった。

たっぷりと嫌味が込められた非難の言葉に、私は『嘘……』と心の中で呟き、絶句する。


十回目になる昨日の見合いは、最初から会う気はなかったので、母が電話口で相手の情報を伝えてきても、全くと言っていいほど聞いていなかった。

ハンズフリーにしたスマホをテーブルに置いて、お菓子を食べながら刑事物のドラマの録画を見ていたのだ。

主役刑事の決め台詞は記憶に残っていても、見合い相手の名前さえ頭に入れていない。

送られてきた相手の写真については、開いてみることなくゴミに出してしまった。

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