お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
そんなことをされて、内定を取り消されては困ると慌てた大学四年生の時の私は、咄嗟に嘘をついた。
『ごめん。派遣会社に登録しているだけなんだ。正社員での雇用先は見つからなかった。あちこちの会社に短期契約で出向くことになると思うから、挨拶は不要だよ』と。
それで両親は今でも私の勤め先を知らないし、これまでの見合い相手への説明にも、嘘が……。
まずいと焦っても、有効な逃げ道を見つけられなくて言い訳できずにいたら、専務は机の引き出しを開けて、なにかを取り出した。
それは写真台紙のようで、彼が開くと、振袖を着た私の立ち姿の写真がチラリと見えた。
その写真の横にはメモ書きが貼られていて、専務が不愉快そうな声で読み上げる。
「大学を卒業後、織部茶問屋で経理の仕事をしつつ、花嫁修業中だと書かれている。それなのに、うちの社員とは、どういうことだ?」
険しい顔で追及されて、私はさらなる窮地に立たされる。
これまでの見合い相手の全てに、両親は嘘の情報を伝えている。
名家のプライドから、織部家の娘が安賃金で働く派遣社員だと言えないためであろう。
時々家業を手伝いつつ、花嫁修業に精を出すお嬢様である、というイメージを娘に持たせたいようだ。
『ごめん。派遣会社に登録しているだけなんだ。正社員での雇用先は見つからなかった。あちこちの会社に短期契約で出向くことになると思うから、挨拶は不要だよ』と。
それで両親は今でも私の勤め先を知らないし、これまでの見合い相手への説明にも、嘘が……。
まずいと焦っても、有効な逃げ道を見つけられなくて言い訳できずにいたら、専務は机の引き出しを開けて、なにかを取り出した。
それは写真台紙のようで、彼が開くと、振袖を着た私の立ち姿の写真がチラリと見えた。
その写真の横にはメモ書きが貼られていて、専務が不愉快そうな声で読み上げる。
「大学を卒業後、織部茶問屋で経理の仕事をしつつ、花嫁修業中だと書かれている。それなのに、うちの社員とは、どういうことだ?」
険しい顔で追及されて、私はさらなる窮地に立たされる。
これまでの見合い相手の全てに、両親は嘘の情報を伝えている。
名家のプライドから、織部家の娘が安賃金で働く派遣社員だと言えないためであろう。
時々家業を手伝いつつ、花嫁修業に精を出すお嬢様である、というイメージを娘に持たせたいようだ。