お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
後ろ手にドアを閉めれば、今度は別の緊張に襲われる。

彰人は奥にある執務机に向かって座り、私を睨むように見ている。

「呼ばれた理由はわかってるな? 社内で親しげにするな」と早速、注意してきた。


「さっきはなんとかごまかせたが、ヒヤリとした。まったく、お前は……」


渋い顔をする彼は、深いため息をつく。

私はドア前から動かずに、「ごめん、気をつける」と目を逸らして謝った。

迷惑をかけて申し訳ないという気持ち半分と、反省しているから早めに解放してほしいという気持ち半分で。


しかし彼は眉間の皺を解いてくれず、椅子から立ち上がると、話しながら近づいてくる。


「気をつけるというのは、改善策になっていない。具体的にどう気をつけるのかを述べろ」


その言い方はまるで、新入社員の反省に駄目出しをする上司のようだ。

仕事上のミスならば、具体性のある改善策を求められるのはわかるけど、こんなことで追い詰めなくてもいいでしょう、と私はムッとする。


彰人は私の目の前で足を止めた。

腕組みをして、頭ひとつ分ほど上からジロリと見下ろす。


威圧されても、私は怖くはない。

そう思うのは、彼と暮らしているせいだろう。

俺様風を吹かせる横柄な人だけど、料理を作ってくれたり、夜中のコンビニに付き合ってくれたりと、優しいところもある。
< 81 / 255 >

この作品をシェア

pagetop