お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
「どうした?」と彰人が平静を装って尋ねたのは、きっと彼女の用向きについてだろう。
けれども彼女は、「どなたかとお話しされていたような雰囲気に思えたのですが……」と戸惑うような調子で疑問を投げかけるから、私は机の下でギクリとする。
目の前にあるスーツの長い足も、ピクリと震えたので、彼も『まずい』と思っているようだ。
その動揺を悟られぬよう、「気のせいだ」と断言した彼は、「早く用件を言え」と催促した。
「はい。次の土曜に予定されております、TKJ社の三十周年レセプションの件ですが……」
私には無関係の業務上の話を聞いていると、徐々に焦りは引いていく。
西尾さんは私が隠れていることに気づきそうもないし、完全に緊張を解いてもよさそうだ。
大きなあくびをしたら、退屈だという気持ちが生じる。
ここにたまチョコフィギュアがひとつでもあったなら、飽きずに眺めていられるけど、それどころかゴミさえも落ちていない。
机の下にはキャスター付きのサイドチェストが収納されているため、移動できるほどのスペースはないし、彼の膝から下と黒い高級革靴をただ眺めているだけしかやることはなかった。
けれども彼女は、「どなたかとお話しされていたような雰囲気に思えたのですが……」と戸惑うような調子で疑問を投げかけるから、私は机の下でギクリとする。
目の前にあるスーツの長い足も、ピクリと震えたので、彼も『まずい』と思っているようだ。
その動揺を悟られぬよう、「気のせいだ」と断言した彼は、「早く用件を言え」と催促した。
「はい。次の土曜に予定されております、TKJ社の三十周年レセプションの件ですが……」
私には無関係の業務上の話を聞いていると、徐々に焦りは引いていく。
西尾さんは私が隠れていることに気づきそうもないし、完全に緊張を解いてもよさそうだ。
大きなあくびをしたら、退屈だという気持ちが生じる。
ここにたまチョコフィギュアがひとつでもあったなら、飽きずに眺めていられるけど、それどころかゴミさえも落ちていない。
机の下にはキャスター付きのサイドチェストが収納されているため、移動できるほどのスペースはないし、彼の膝から下と黒い高級革靴をただ眺めているだけしかやることはなかった。