無敵の剣
「ここを出よう」


土方さんに促され、集落の入口まで来た


『一』


ふと、雪の声がした




私達の家にも、火の手が回ったのかな


家の方へ振り返る




『一』




雪…




「行くぞ」



土方さんの手が肩にのる



「一」




雪が笑っている姿が思い浮かぶ

雪が着ていた着物




私は、全力で家の方へ走り出す


見えない恐怖なんてこれっぽっちも感じず


煙が立ち込める家に入り、雪の着物を
1枚づつ触る


これじゃない


生地の感じ、模様を手で確認する


「ケホッ ケホッ ケホッ」


「馬鹿野郎!!何してんだよ!!」


「土方さん!!桜色の…ケホッ ケホッ
桜色の着物探して!!」



雪の着物は、どれも生地が良く高値な物
全部持ち出すことは、不可能だ


「桜色…これか?」


触って確かめる


「これかな…? わからない…」


雪、見えなくても着物選んでたよな?

慌てているせいか、どれも同じな気がする


「一、もう行かないと」


「土方さん!他に着物ない?」


「大事な物なんだろうが…
着物は、これで…
あ!ここにもあった!どうだ?」


「これ!この着物だと思う!!」


「桜色で、白い雪がふってるような奴?」


「そう!そんな感じ!!ケホッ
よかった…」



「よし!手を貸せ!走れるか?」


「ああ」












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