無敵の剣
「斎藤はん?」



翌日 深雪と町を歩いていると
声を掛けられた



振り返ると



目を大きく見開き、悲しそうに俯いた
その娘は、働いていた旅籠の娘だった



「あぁ 久しぶりだな
深雪 こちらは、私が以前世話になった
旅籠の娘さんだ」


「深雪です」


「あ ミツです」




聞けば…  旅籠は、閉めていないらしい


どうやら、ミツと私を引き離したかっただけのようだ


「斎藤はん…うち、斎藤はんが…」



「おミツさん! 今、斎藤さんのそばにおるんは、私や!それ、言うんはズルイで!」



「はい… うち、嫁にいくんです」


「そうか 幸せにな」


「はい」















少し、ふて腐れた深雪と並んで歩く


「刀を持つことを特別に思ったことがない
むしろ、私にはコレしかない
深雪は、私の何がいいんだ?
人斬りの私といれば、たくさんの血を見るんだぞ? 狙われるかもしれない」



「私も… 太夫であることしかなかった
今は、病持ち
でも、病のおかげで、斎藤さんに会えた
無意味に血が流れることは無いわ 
理由なしに人斬りをする人やない
それに、なんやかんや
私を守ってくれるから!狙われても平気!」



「そういえば…
私は、深雪の舞を見たことがない」


「あら! ホンマやね!
ほな今度、島原で披露させてもらいまひょ」



「楽しみにしてる」



「ふふっ家で練習せな!」




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