10歳の年の差はどうやって埋めますか?
私は私であの時の事は鮮明に覚えている。

「あの時はどうしてそうしたか自分でもわかりませんでした。」

私も素直に答える。

「でもあれは自然に出た表情だったんです。」

私はそこでニッコリと微笑む。

松田さんは照れくさそうに一瞬私から視線を外したが、またゆっくりと私を伺うように視線を合わせてきた。

「今日は大丈夫です。」

そう言って微笑んだ松田さんの笑顔に、今度は私がドキッとする番だった。

「それにしても、私が市役所に行く事をご存じだったんなら、そちらで声を掛けるという手段もあったんじゃないですか?」

私の言葉に、松田さんは驚いた表情をした。

「私は美術館であなたを捕まえる事しか考えていませんでした。」

そして松田さんはがっくりとうなだれる。

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