10歳の年の差はどうやって埋めますか?
それを簡単に乗り越えてくる松田さん。

「…分かりました。でもあと何回か会ってから、正式にお付き合いをするか返事をさせてもらっていいですか?」

まだ壁は残っている。

ちょっと不満そうな松田さんの顔を見ながら、私は微笑んだ。

「だって私は今、美術館以外の所にも一緒に行ってみたいと思ってしまったんです。」

私の言葉に松田さんは満面の笑みを見せた。

家に帰って、私は今日一日のことを頭の中で反復する。

「思い切って美術館に行って良かった。」

私は温かな、くすぐったい気持ちを感じる。

私の家の前まで送ってもらって、そこで別れた。

「場所は覚えたので、今度は迎えに来ますね。」

松田さんは屈託なく笑って去って行った。

彼はアパートに一人暮らしで、うちとは二駅ほど離れている。

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