イジワル上司にまるごと愛されてます
 柊哉に褒められて、来海は照れ笑いを浮かべた。

「え、そうかな」
「そうだよ。だからこそ俺は――」

 柊哉が口をつぐんで、ふいっと視線を逸らした。

「だからこそ、なに?」
「なんでもない」
「えー、気になるなぁ」

 来海は柊哉の顔を覗き込んだ。彼は運転席に向かって言葉を発する。

「運転手さん、次の信号を左折してください」

 話題をはぐらかされたようで、来海は小さく頬を膨らませた。

「あの白いマンションですか?」

 バックミラー越しに運転手に訊かれて、来海は返事をする。

「そうです」

 タクシーは左折して、マンションの駐車場の手前で停車した。

「部屋まで送る」

 柊哉に言われて、来海は首を左右に振った。

「え、いいよ」
「俺、この近くに引っ越したんだ。歩いて帰れるから。運転手さん、これで清算をお願いします」

 柊哉は部長に渡されたお札をドライバーに渡した。
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