イジワル上司にまるごと愛されてます
「ありがとうございます」

 清算を済ませて、来海と柊哉はタクシーを降りた。

「柊哉、引っ越したんだ」

 マンションのエントランスに向かいながら来海は言った。

「ああ。ロンドン赴任中はトランクルームに荷物を預けてたんだ。戻ってきてから、マンションを探した。駅前のマンションだよ」
「へー。駅に近いと便利でいいよね。うらやましい」

 来海のマンションは駅から徒歩で十分ほどの距離なのだ。

 マンションのエントランスに到着し、来海は足を止めた。

「ここでいいよ。わざわざありがとうね」

 来海がバッグから鍵を取り出したとき、柊哉がスーツの胸ポケットから、青い包装紙に包まれた小さな四角い箱を取り出した。

「お土産」

 柊哉が無造作に差し出し、来海は瞬きをした。

「えっ、わざわざありがとう」
「ん」

 柊哉は来海の手のひらに箱を押しつけ、前髪をかき上げた。
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