イジワル上司にまるごと愛されてます
 今でもスマホにつけているそのチャームは、初めてのボーナスで自分へのご褒美として買ったものだ。あんな小さなチャームを柊哉が気に留めてくれていたことが嬉しくて、どうしても顔がニヤけてしまう。

「ね、お茶でも飲んでく?」
「じゃあ、ごちそうになろうかな」
「お茶しかありませんけど」

 来海がいたずらっぽく笑うと、柊哉も同じような口調で同じように笑う。

「お茶しか期待してませんけど」
「もう!」

 そんなやりとりが楽しくて、来海は笑いながらオートロックを解除した。そうしてエレベーターで三階に上がり、角部屋の鍵を開ける。

 来海はドアを開けて靴を脱ぎ、部屋の明かりをつけた。

「どうぞ」
「お邪魔します」

 柊哉が靴を脱いで廊下に上がった。

 楽しい気持ちのまま彼を部屋に案内してしまったが、四年前、ここで彼とキスをしたのだ。そのことを思い出して、胸がギュウッと苦しくなる。

(でも、柊哉はもうなんとも思っていないから、こうして私の部屋に上がったんだろうな)
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