イジワル上司にまるごと愛されてます
 来海は苦い気持ちになりながら、キッチンに向かった。そうしてそんな気持ちを気取られないよう、明るく声をかける。

「適当に座っててね~」

 来海はバッグとピアスをシェルフの上に置いた。冷蔵庫からアイスティーのペットボトルを取り、備え付けの食器棚からグラスを二つ出した。柊哉はオーバル型ローテーブルの前にあぐらをかいて座っている。

「紅茶でいい?」
「ああ、ありがとう。来海はいつもアイスティーだよな」
「そういう柊哉はいつもブラックコーヒーだったよね」
「よく覚えてるな」
「そりゃ……」

 好きな人のことだもの、と言いかけて、来海は言葉をのみ込んだ。彼の近くに腰を下ろしてローテーブルにグラスを置き、アイスティーを注いでそれぞれの前に置く。

「いただきます」

 柊哉はグラスを取り上げ、ゆっくりとアイスティーを飲んだ。

(まさか柊哉が四年で帰ってきて、こうして私の部屋でお茶を飲むなんて……想像したことすらなかったな)

 そんなことを思いながら、来海もグラスに口をつけた。そうしてシェルフの上を見ながら言う。
< 117 / 175 >

この作品をシェア

pagetop