イジワル上司にまるごと愛されてます
 来海は切なく悲しい気持ちをごまかすように、最後はおどけた表情で小さく舌を出した。

「来海は、日本で」

 柊哉はゆっくりと、噛みしめるように言葉を発した。

「うん、私、英語苦手だし。それに私のワークライフプランには海外赴任は入ってないも~ん。今日は嬉しい報告をありがとう。さあさあ、景気づけに飲も飲も~!」

 来海はレモンサワーのグラスを取り上げ、柊哉の日本酒のグラスに強引にカチンと合わせた。



 寂しい気持ちを紛らわせようとレモンサワーをお代わりした来海は、居酒屋を出る頃にはまっすぐ歩けなくなっていた。

「大丈夫か?」
「だいじょぶ、だいじょぶ!」

 来海はへらへらっと笑った。そうしないと泣いてしまいそうだったから。

 柊哉はため息をつく。

「いつもは一杯しか飲まないのに。今日は一杯多かったな」
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