蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
「で、本当に彼氏できたの? 誰なのよ。隠さず言いなさい」
父の追求は先延ばしにすることが出来たけれど、久津間さん相手ではそう上手くはいかないだろう。
だからといって、佳一郎さんファンの彼女に「佳一郎さんと付き合ってます」とは怖くて言えず、笑顔で誤魔化すという手段しか思い浮かばなかった。
誰か来ないだろうかとエレベーターホールの方にちらちら視線を投げつけていると、男女の話し声が聞こえて来た。
私は背筋を伸ばして、タイミングよく訪ねて来てくれた親子にも見える二人組へと声をかけようとしたけれど、それよりも先に父がまた受付前に現れた。
「お待ちしておりました!」
「おぉ。倉渕社長自ら出迎えてくださるとは、ありがたい」
父は父と同年代だろう男性へと足早に歩み寄り、気軽な様子でその背中をポンポンと叩いた。
すぐに男性側の秘書らしき男性も合流し、父が「さぁどうぞ」と彼らを案内し始める。
「社長、お客様を待ちわびていたのね」
「……そ、そうみたいだね」
実際はこうして久津間さんと小声でやり取りをしている間も、父が意味ありげな視線を私に送ってきているため、それだけではないことは明らかである。