蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
カツッとハイヒールの踵を鳴らし、男性と一緒にいた私と同い年くらいの女性が立ち止まった。
服装もメイクも立ち振る舞いも、全体的に派手な印象を受ける彼女は、興味津々な様子であたりを見回した後、受付カウンターで視線を止める。
しっかりと目が合った瞬間、煩わしそうな顔をされてしまい、私も久津間さんも対応に遅れをとってしまった。
そろってお辞儀をしたけれど、顔をあげた時にはもう彼女は私たちのことなど気にも留めていなく、「待ってお父さん」と年配の男性へと急ぎ足で歩み寄っていった。
父親の方にはうっすらと見覚えがあった。
あと少しで思い出せそうなのに、なかなか思い出せないことにモヤモヤしていると、「倉渕社長」と女性が甘えた声で父に話しかけた。
「遼さんは……あの、折角ですし副社長ともご挨拶がしたいのですが、いらっしゃいますか?」
その声にドキリとし、私は思わず彼女と父の会話に耳を澄ませてしまう。
「あぁ、すまないね。今、遼は出ていて、社にいないんだ」
「そうですか」
父に寂しそうな顔を向けた後、彼女は一歩後退し、後ろに控えている秘書の男性に囁きかけた。