蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~


「あ、はい。水岡先輩のことですね……それで、残念って?」

「私も詳しいことはよく分からないけど、花澄ちゃんの知り合いの彼が出したデザイン案も良いとこまで残っていたみたいだけど、最終的には別のデザイン事務所の案に決定したって」

「……そうだったんですか」


直接水岡先輩からコンペに参加していたようなことは聞いてなかったけれど、久津間先輩の話が本当だとすれば、彼が倉渕物産を訪れる用事はなくなり、しばらく顔を合わせることもないだろう。

水岡先輩には悪いけれど、良かったと安堵してしまう。


「あれ……違ったのかぁ」


顔を覗き込んできた久津間先輩がそんな感想を述べ、私は瞬きを繰り返してしまう。


「今度はなんですか?」

「実はね、花澄ちゃんに彼氏が出来たって社内ですっごい噂になっててね。私はあの時の先輩の彼かなって予想してたんだけど……今回のことも知らなかったみたいだし、彼氏は違う人みたいだね」


兄や父の耳にまで入ってしまっていることを考えれば、久津間さんの言う通り、本当にそのような噂が社内に広まっているのだろう。

みんなそんな目で私を見ていたのかと思えば急に恥ずかしくなってしまい、俯けばまた横から肘で突かれてしまった。

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