蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
そんなことを思い、早く会社に戻るべく足早に進んでいると、前方にすらりと細長い姿を見つけ、私は自然と笑顔になる。
「佳一郎さん!」
呼びかけるよりも先に彼の瞳は私を捉えていて、乱れのない足取りでこちらへと真っ直ぐ向かってきていた。
「どうしてここに?」
「通りがかりに花澄さんの姿を見つけて、私だけ車を降ろさせていただきました」
「本当ですか? 帰り道にこの通りを選んで良かった」
この大通りを通るよりも、もっと早く会社に帰れる道はいくつもあった。
けれど、時間に余裕があったことと、おむすびが美味しくて少し食べ過ぎてしまったことから、遠回りをして帰ろうと思いこの道を選んだのだ。
「花澄さん、このまま社に戻られますか?」
「はい」
「分かりました。では一緒に帰りましょう」
顔を見合わせ微笑みあったあと、私たちは並んで歩き出した。
「副社長が花澄さんに申し訳ないと謝っておりましたよ」
「別に気にしなくていいのに。あ、でも、兄にはまた誘ってねって伝えておいてください……佳一郎さんも、いつかどこかに私を誘ってくださいね」
囁きかけると、佳一郎さんの手が私の手にそっと触れた。