蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
ずっと私に謝っていた彼の姿を思い出してしまう。
また切なくなって表情を曇らせると、兄が「花澄」と明るく私を呼んだ。
「元気がない佳一郎を見るのも初めてな気もするし……お前が許したいなら、早めに許してやれ」
兄は微笑みながら、副社長室の隣にある秘書室に向かって指をさす。
私も笑みを返し、軽く頭を下げたあと、副社長室を出た。
「……佳一郎さん何処にいるんだろう」
実は、兄の所に行く前に秘書室に寄ったのだ。
室内は誰の姿も無く、佳一郎さんのデスクも綺麗に片付けられていたため、てっきり兄の所にいると思ったのだけれど、彼はそこにいなかった。
佳一郎さんと甘いものでも食べながら、いろいろ話がしたかった。
だから仕事を終え会社を出たあと、麻莉さんの所でテイクアウト用の可愛らしいカップケーキを購入し、社内に人が少なくなった今を狙って戻ってきた。
このまま気まずくなってしまったらと思うとただただ怖くて、そうなる前に彼の考えていることに触れたかったのだ。
覗き見た佳一郎さんのデスクには鞄が置いてあったし、兄が言っていた通り彼はまだ帰っていない。社のどこかにいるはずなのだ。