蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
明るい場所で連想するのは兄のいた副社長室だけれど、そこでは二人っきりで話ができない。
どこが良いだろうかと考え、秘書室が無難だろうという考えに至った時、ゆるりと佳一郎さんが首を振り、持っていた缶コーヒーをテーブルの上に置いた。
「ここで良いです」
「……そうですか?」
佳一郎さんが手を伸ばし、私の頭を優しく撫でてくる。
「薄暗い中でこうして触れあっていると、秘密を共有しているみたいでドキドキしませんか?」
魔法にかけられたかのように、私の胸は高鳴り出す。
言葉の響きは意地悪く聞こえるのに、彼の表情はやっぱり寂しそうで、切なくなってしまう。
「……兄に反省中だと聞きました。さっきもずっと謝ってばっかりだったし、私は本当に平気なので、もう気にしないでください」
思い切って話を切りだせば、佳一郎さんがテーブルから腰を上げ、私と向き合った。
ぎゅっと紙袋の持ち手を握りしめ、真っ直ぐ向けられる眼差しを受け止める。
「花澄さんが倉渕社長の娘だと名乗り出てくれたから、彼女は引き下がってくれました。俺ももう恋人になれと付き纏われることはないでしょう。感謝しております」