蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
彼はほんの数秒瞳を閉じたのち、辛そうに言葉を続ける。
「けれど……花澄さんが社長の娘であることにコンプレックスを感じていることを知っていたのに、それを自ら言わせるような状況を回避することができなかった自分が情けなくて。大切なあなたを辛い気持ちにさせてしまったことが申し訳なくて」
そっと彼の腕に触れれば、手の平から強張った感触が伝わって来て、また切なくなる。
私は大きく首を横に振ってから、佳一郎さんに笑いかけた。
「佳一郎さん。実はあの時、私、お父さんの娘で良かったって、思ってました。だって倉渕物産社長の娘だから、あなたを奪い取られなくて済んだんですよ。父に感謝しなくちゃ」
目を見張ってから、ふっと佳一郎さんが表情を柔らかくさせた。それが嬉しくて、また私は笑顔になる。
「これからだって、ライバルが出現したら戦います。中佐都さんを見習って、社長の娘だっていうことも必要とあらば振りかざそうと考えています。もちろん、そうするならお父さんの足を引っ張らないように自分磨きだってちゃんとしなくちゃだし……あぁでもやっぱり、いつかは社長の娘という肩書きに頼らなくても誰もが納得するくらい、佳一郎さんの似合いの彼女に絶対なってみせます!」