蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
「いえ。大丈夫です。怒られてなんかいませんから心配しないでください」
「そっか、安心した……いや、でもごめん。近くに社員がいることに気付かないであんなこと話していた俺が迂闊だったよな。しかもすごく、こうるさそうな男性だったから余計に気になって」
「彼、いつもあんな感じなんです。だから気にしないでください」
「だったらいいけどさ」
水岡先輩の安心した様子に笑みを浮かべて、私は軽く頭を下げた。
「気にしてくれて有難うございます。お仕事頑張ってください。それじゃあ、また」
再び水岡先輩が倉渕物産を訪ねてくることがあれば、また顔を合わせることもあるかもしれない。
そんなことを考えながら回れ右をし、地下に降りる階段へと向かおうとした私の腕を、水岡先輩が掴んできた。
「花澄ちゃん、もしかして帰り?」
「はい。もう家に帰ります」
「電車で?」
「……そうですけど」
私の返事が信じられないのか、水岡先輩は周りをきょろきょろ見回している。
「車で送り迎えとかされてないの? ほら、学生の頃も行き帰りは車だったじゃん」
「されてません。それにあの頃だって、時々そういうこともあったってだけですから」