蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~

水岡先輩のように勘違いされることも多いけど、通勤時の私の移動手段は主に電車だ。

もちろん父と兄にはそれぞれお付きの運転手がいるから満員電車に乗ることなく出勤しているけれど、それは社長、副社長だからであって私は違う。乗せてもらう理由はない。


「ひとりで家に帰るだけっていうなら、このまま一緒に飲みに行かないか?」

「これからですか?」

「あぁ。今日は会社回りだけして、事務所には寄らないつもりだったから、俺もこのまま帰るんだ……そうそうこの前偶然に、サッカー部の顧問だった東橋(ひがしばし)先生と会ったんだ」

「東橋先生に会ったんですか!? お元気でしたか!?」


水岡先輩の誘いには気乗りしなかったけれど、懐かしい名前を出されてしまえばもう少し詳しい話が聞きたくなってくる。


「あぁ。それがな……とりあえずどこか店に入って、ゆっくり話そうぜ」


ゆっくりと頷きながら「はい」と返事をすれば、水島先輩は嬉しそうに笑って掴んでいた私の腕をそっと離す。

「二駅先に良い店あるから、そこにしようぜ」と早速階段を降り始めた彼に続いて、私も歩き出したのだった。


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