蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
うっとりしている同僚の言葉に軽く否定を入れると、私の声が聞こえたようで中條さんがジロリと睨みつけてきた。
「何か言いましたか」という冷ややかな眼差しに、私はすぐさま口を閉じる。
何かの書類を手に、再び話し始めたふたりの様子を見つめていたら、小さなため息が口をついて出てしまった。
中條さんは秘書室長も務めているためか、秘書の女性は彼に怯えではなく信頼の眼差しを向けている。
聞こえてくる中條さんの声音も、彼女に対する態度も、私の時と違い柔らかい。
中條さんは背も高いし、面長の顔だってそれなりに整っているし、清潔感は抜群で、クールな雰囲気を纏っているしで、見ているだけなら確かに格好良い。
私の隣にいる先輩のように、社内には中條さんに好意を持っている女子がたくさんいるのも知っている。
けれどそれはみんな、彼の毒舌の被害に遭っていないからだと考えていたけど……私は最近、もしかしたらそうではないかもと思い始めている。
彼は私の出来が悪いから、さっきみたいにチクチク注意してくるだけで、毒を吐く必要のない他のみんなには普通に優しい人なのかもしれない。