蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
その名を口にすれば、彼はホッとしたように笑う。
「久しぶりだから俺の事なんか覚えてないかもと思ったけど、良かった!」
「忘れるわけないじゃないですか! ご無沙汰しております」
水岡先輩は、中学高校と私と同じ学校に通っていた一つ上の先輩で、その間ずっとサッカー部に所属していた。
私も高校の時にサッカー部のマネージャーをやっていたので、先輩とは二年ほど共に青春を過ごしているのだ。
「そうだった。花澄ちゃんは社長令嬢だったもんな」
しみじみと呟いたあと、ふっと口元に薄く笑みを浮かべ、ぎらりとした輝きをその瞳に宿す。
思わず身構えた私に、彼はてきぱきと取り出した名刺を差し出してきた。。
「俺さ、今、ミズタデザインの代表をしてるんだ。改めてよろしく」
「そうだったんですね。先輩すごいです」
水岡先輩から受け取った名刺には、名前の上に代表取締役としっかりと明記されている。
学生の頃の水岡先輩は、発言力だけでなく実行力も兼ね備えているような人だった。
自分の会社を立ち上げたのだと聞かされ驚きはしたけれど、意外ではなく、逆に納得させられてしまった。