蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~

その名を口にすれば、彼はホッとしたように笑う。


「久しぶりだから俺の事なんか覚えてないかもと思ったけど、良かった!」

「忘れるわけないじゃないですか! ご無沙汰しております」


水岡先輩は、中学高校と私と同じ学校に通っていた一つ上の先輩で、その間ずっとサッカー部に所属していた。

私も高校の時にサッカー部のマネージャーをやっていたので、先輩とは二年ほど共に青春を過ごしているのだ。


「そうだった。花澄ちゃんは社長令嬢だったもんな」


しみじみと呟いたあと、ふっと口元に薄く笑みを浮かべ、ぎらりとした輝きをその瞳に宿す。

思わず身構えた私に、彼はてきぱきと取り出した名刺を差し出してきた。。


「俺さ、今、ミズタデザインの代表をしてるんだ。改めてよろしく」

「そうだったんですね。先輩すごいです」


水岡先輩から受け取った名刺には、名前の上に代表取締役としっかりと明記されている。

学生の頃の水岡先輩は、発言力だけでなく実行力も兼ね備えているような人だった。

自分の会社を立ち上げたのだと聞かされ驚きはしたけれど、意外ではなく、逆に納得させられてしまった。


< 7 / 126 >

この作品をシェア

pagetop