蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
「あの彼だって、裏を返せば出世したいがために君に良い顔しているだけのように、俺には見えるよ。別の女がいたって全然おかしくない。まぁあんな感じじゃ簡単に尻尾を掴ませないだろうけどね」
「……中條さんのことを良く知りもしないくせに、勝手なこと言わないでください。彼はあなたとは違います」
私は中條さんほど裏表のない人はいないと思っている。
くれた言葉も、見せてくれた温かさも、計算の上でのことだったなんて思えないし、思いたくもない。
強く言い返せば、水岡先輩はつまらなさそうに肩をすくめた。
「もう君に用はないから、俺行くね。倉渕物産ほどじゃないけど、けっこう大きな会社の社長の娘さんと、もしかしたらこのあと会えるかもしれないんだ」
私に背を向け歩き出そうとしたけれど、彼はすぐに肩越し振り返り、笑みを浮かべた。
「自分は愛されているって、いつまでも思わせてもらえることを祈ってるよ」
私を馬鹿にしているのがしっかり分かる笑い顔に、苛立ちが込み上げてくる。
「だから! 中條さんはそんな人じゃないって言ってるじゃないですか!」
去っていく後ろ姿に向かって声を荒げたけれど、水岡先輩は再び振り返ることもせず、誰かに電話をしながら店の駐車場に停まっている車へと乗り込み、すぐに私の傍を走り去っていった。