蜜月オフィス~過保護な秘書室長に甘やかされてます~
中條さんからの着信が響く中、ただ静かに、私は涙を流し続けていた。
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ぼんやりとしたまま駅から自宅に続く道を歩いていると、手に持っていたスマホが着信を告げた。
電話をかけてきた相手をちらりと見て、私はため息を吐く。
兄から三度目の着信である。
何度も中條さんから着信があったけれど出る気になれず放っておいたため、きっと彼が私の所在を確認する電話を兄にしたのだろう。
中條さんに私のことを聞かれたことで兄も気になり、こうして何度も電話をかけてくるのだと思うけど、今は誰とも話をしたくない。
明日はちゃんといつも通りの私に戻るから、今はそっとしておいて欲しい。
心の中で兄にごめんねと詫びながら、私はスマホの電源を落としバッグの奥へと押し込んだ。
家の門のそばまで来て、戸が開いていることに気が付いた。
そこから出てきた一台の車を見て、苦い気持ちになる。
しかもその車が私のいる方向へと進路を取ったため、さっきの電話に出るべきだったと激しく後悔した。
顔を伏せて、車を運転しているだろう人物に気付かれないよう試みたけれど、無駄だった。
車は私の横でぴたりと停止する。