オオカミ弁護士の餌食になりました

 昔からの知り合いの私なら、彼としても気心が知れていて頼みやすいということらしい。

 利害関係の一致とは、こういうことをいうのだろうか。

「俺と恋人ごっこ。やらない?」

 私の目をじっと見てくる彼の言葉には、わずかに強引さがにじんでいる。

「誰かと結婚して、結ばれて、子どもを授かりたい。真凛ちゃんの悲願は、きっと自分から動き出さないと叶わないよ」

 いたずらっぽく笑う彼を見つめ返して、そうかもしれないと思った。

 自分から動き出さない限り、私が求める理想の未来は、決してやってこない。

「わかり、ました」

 覚悟を決めて答えると、香坂さんは表情を崩した。


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