オオカミ弁護士の餌食になりました

 大量にある書類のファイリングに取り掛かろうと踵を返した瞬間、後ろから手を掴まれた。

 一瞬、びくりと身体が跳ねる。

 香坂さんは私の指に自身の指を絡めると、そのまま口元に持っていき、軽く唇をつけた。

 触れたぬくもりに、手が震えそうになる。

 唇を噛んで、こみ上げてくるなにかを必死にこらえていると、彼は急に吹き出した。

「なんて顔してるんだよ」

 広い肩を揺らしている香坂さんを見て、ますます頬が火照る。

「……どういう顔をしてました?」

 焦りと緊張に耐えていた私の顔は、さぞかし笑えただろうと思っていると、彼はびっくりするくらい優しい目で私を見た。

「本当にかわいいね、君は」

 どきりとするような言葉も、恋人ごっこの延長なのだろうか。


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