オオカミ弁護士の餌食になりました


 兄の海斗は、司法書士という堅めの仕事を選んだわりに派手好きな男だ。

 お祭りやパーティーが大好きで呼ばれれば必ず参加するし、機会があれば自ら開催する。

『開業一周年記念パーティー』と書かれた横断幕を見上げながら、私はウェルカムドリンクに口をつけた。

 ふと、彼がゼミ生を招いて毎晩のように騒いでいたことを思い出す。

 兄は昔から変わらない。

 ひとりで過ごす時間が苦手で、常に誰かと一緒にいたがる究極のさみしがり屋。つまりそれは、人が好き、ということなのだろうか。

 同じ大学の法学部出身である私と彼には、共通の知人がいる。

 兄の後輩で私の先輩にあたる何人かと軽く挨拶を交わしてから、百人くらい入れそうなレセプションパーティーの会場を見渡した。


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