結婚のその先に
浴びていたのはお湯とは言えない水に近い冷たさだった。

体が冷えきっている栞菜を抱き締める。

「なにしてんだよ…」
冷たい栞菜を抱き締めながら呟くと
「置いていかないで…」
と栞菜も呟く。

「置いていくわけないだろ。そばにいる」
「嘘つき…」
「?」
「置いていった」
「さっきは傘買いに行ってたんだよ。今日雨だから。声かければよかったな。ごめん。」
栞菜は余計に縛り付けるようなことしか言えない罪悪感を感じながらも、自分を止められなかった。

どんなに冷たいシャワーを浴びても忘れたいことを忘れられない。消したい想いを消せない。
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