結婚のその先に
「はじめからこんなダメなママじゃ嫌にもなるよね。」
「俺がもっとはやくちゃんと栞菜に気持ち伝えていたらよかったんだよ。妊娠して不安定なときにほとんど家にも帰らないで仕事に没頭してた。ごめんな。」
栞菜は首を横に振る。

「私、ちゃんとママになれるかな…。」

両親と一緒の思い出がほとんどなかった栞菜には自分が母親になる姿が想像がつかない。

「なれるよ。栞菜にはこんな家族になりたいとかお父さんお母さんにこんなことをしてほしかったとかいっぱいあるだろ?」
「うん」
「叶えよう。ひとつひとつ。時間はいっぱいあるからさ。結婚して終わりじゃない。結婚ははじまりなんだよ。俺たちはまだ始まったばかりだろ?」
「…うん」
啓吾は自分の膝に頭をのせる栞菜に口づけた。
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