結婚のその先に
「あー!藤崎さんっ!」
赤ちゃんの人形をツルッとお湯の中に落としてしまった啓吾は周りから注目されていた。

「本当の赤ちゃんだったら大変なことになりますよ」
「はい。すみません。」
なんでもうまくこなせて仕事も家事もできる啓吾にはじめて弱点を見つけた栞菜はくすくすと笑っていた。

「ガーゼを濡らして、泡タイプの石鹸を出して、」
「あの…」
「どうしました?」
「両手が塞がってるんですけど…」
「片手でもこうすれば出せるでしょ」
ベテラン助産師さんに手取り足取り鍛えられる啓吾に栞菜は笑いが止まらなかった。
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