SKETCH BOOK



「お母さん?帰って来たのー?」


目を閉じてそう叫ぶと、返事はない。


もう、聞こえないのかな?


もう一度叫ぼうと目を開けると、
目の前には怪訝そうな顔をした橙輝が立っていた。


「う、うわっ!」


「お前、何してんの?」


「ちょっと、びっくりさせないでよ!」


「お前が勝手に驚いたんだろ」


慌てて体を起こして橙輝を見ると、
少し変わった所に気付いた。


ヘルメットを持っている……。


「どこに行ってたの?」


最近橙輝は一日中どこかに行っては
夜遅くに帰ってくる。


どうせいつも通り
絵を描いていたんだろうなと思っていたけれど、


どうもそうじゃないみたい。


「ちょっとな」


「何よ」


「……教習所」


「教習所ぉ?」


教習所って、車の免許を取るところ?


でも、なんで橙輝がそんなとこに?


ハテナマークいっぱいの顔を見せると、
橙輝は笑った。


「バイクの免許、取りに行ってたんだよ」


「バイク?」


「おう。やっと取れた。
 バイト先の先輩にバイク譲ってもらったから、
 ちょっと練習がてら乗ってきた」


「へぇ!いいなあバイク!」


< 125 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop