SKETCH BOOK
「梓。橙輝くんと仲良くね?」
「分かってるよ」
短く返事を返して、あたしも
二階の自室に籠る。
荷物を片付けて一息つくと、
隣の壁の向こうから、
何やら物音が聞こえた。
橙輝かな?
部屋を出て、隣の部屋の前に立つ。
三回ノックしてみた。
それでも返事が返ってこなかった。
確かに二階に上がっていたはずだけど。
いけないと思っているけど、
橙輝のことはちょっと気になるところがある。
学校ではどうしようとか、
どうやって名前を呼ぼうとか、
そんなことを考えながら、
あたしはドアノブに手をかけた。
カチャッと音がして扉が開かれる。
中を覗き込むように見ると、橙輝がいた。
橙輝はぱっと振り返ってあたしを見た。
「あ、あの……」
「ドア、閉めてくれる?」
「あ、ごめんなさい」
ドアを閉めて中に入ると、
橙輝はあたしに背を向けた。
何をしているんだろう。
そっと覗き込んで、思わず声をあげた。
「すごい!上手なのね、絵を描くのが」
「別にすごくねぇだろ」
「えー、こんなに上手い人、なかなかいないよ?」
「へえ」
橙輝って、なんだか無愛想でちょっと怖い。
あたしがひょっこりと手元を覗くと、
橙輝は気怠そうにあたしを見た。