SKETCH BOOK






パチッと目が覚めた。


カーテンを開けて大きく伸びる。


欠伸を一つして一階のリビングに降りて行った。


リビングに入ると
お母さんとパパが食卓に揃っていて、


満面の笑みを返してくれた。


パパが見ていた新聞の記事に
軽く目を通していると、


二階から橙輝が降りてきた。


目がばちっと合ってつい逸らしてしまう。


「おはよう。梓」


「お、お……はよう」


何?


昨日からなんなの?


どうして梓って呼ぶのよ。


もしかしてもう妹だからって、
そんな理由?


何かが変わるとは思っていたけど、
変わりすぎでしょう。


もうどうしていいか分からなくて
戸惑ってしまう。


橙輝は席について大きく欠伸をした。


「今日から家族よ。嬉しいわね」


「そうだなぁ。橙輝、梓ちゃん。
 仲良くしろよ?」


「はーい」


「おう」




パパが柔らかく笑う。


いつもと違う朝がやってきた。


今日からあたしは、鳴海梓。


橙輝と兄妹なんだ。


これからどうなっていくんだろうっていう不安と
期待とが交錯して頭をぐるぐる駆け巡る。


「おっと、遅刻する」


パパが慌てて立ち上がったのを見て、
あたしも時計を見る。


もうこんな時間なのね。


急いでご飯を食べて制服に着替える。


カバンを持って玄関に行くと、
ちょうど橙輝も出るところだった。


靴を履いてなんとなく一緒に玄関を出た。


外に出ると橙輝はスタスタと歩いていく。


立ち止まってその背中を眺めていると、
橙輝は後ろを振り向いた。


「何してんだ。行くぞ」


「う、うん!」



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