SKETCH BOOK
橙輝に駆け寄ると、
橙輝はゆっくりと歩き出した。
何も会話はないけれど、
なんとなく心が近い気がする。
やっぱり妹になったから?
「お前、香水つけてる?」
橙輝がポツリと声を上げた。
「うん。浩平にもらったの」
「……へえ」
「どう?変かな?」
「おう!おはよう梓」
「こ、浩平!」
後ろから抱きつかれる。
振り返るとそれは浩平で、
浩平は楽しそうに笑っていた。
横目でちらっと橙輝を見ると、
橙輝はスタスタと早歩きで歩き出した。
「今日からお前ら、家族なんだよな」
「松田。その話学校じゃ禁句な。
秘密なんだよ」
「あ、そうなのか?
俺だけ?知ってんの」
「そうだよ。だから絶対に喋んなよ」
「わかってるって」
浩平は嬉しそうにニヤニヤすると、
あたしの手をきゅっと優しく握った。
浩平にもらった香水、
つけてきてよかった。
ふわっと鼻を擽るその匂いは
柔らかくて甘い、
いかにも女の子っぽい匂い。
これをつけていると
浩平とも近くに感じられる。
安心するんだ。
浩平の彼女でいられるんだって思うと。