SKETCH BOOK
学校に着いてそれぞれが席に着く。
いつもと変わらない教室。
誰も何も知らない。
あたしと橙輝が家族になった事実は、
浩平以外は誰も知らない。
みんなは変わらずあたしに話しかけてくれて、
学校生活も悪くないと感じるようになっていた。
そんな時。
「席替えするってよ!」
誰かの声に、あたしは大きく反応した。
席替えするの?
入学してからずっとこの席だったのに、
変わってしまうんだ。
ちょっと寂しいような嬉しいような、そんな感じ。
先生が作ってきたクジを順に引いていく。
あたしが引いたのは十五番だった。
黒板を見ると、十五番は窓際の一番後ろ。
あんまり前の席と変わらない。
右隣の席は八番だった。
誰が隣になるんだろう。
席を移動して頬杖をついて
窓の外を見ていると、
誰かが隣に移動してきた。
仲いい子だったらいいな。
そう思って横を見ると……。
「だ、橙輝?」
「お、なんだよ。お前か」
隣に来たのは橙輝だった。
まさか席替えをしても隣になるとは。
クジ運の奇跡に驚く。
びっくりして目を丸くすると、
前の席からトントン、と机を叩かれた。
「浩平!」
「よっ!みんな揃って固まるとは奇遇だな。
よろしく。梓。鳴海」
「よろしくー」
「……おう」
まさかみんな揃うとは思わなかった。
これがいいのか悪いのか分からないけれど、
環境が変わって
何だかいい事が待っていそうな予感がする。
窓の外を見ると、
雨も降っていないのに虹が出ていた。
小さな奇跡がいくつも重なる。
なんだか本当にいい事が待っていそう。
そう思った。