SKETCH BOOK



「橙輝の絵はすごいです。
 ちゃんと見てあげてください!」


勢いあまって美術室を飛び出し、
廊下を駆けだす。


取り戻すつもりだったのに、
先生に啖呵を切っただけで終わってしまった。


何やってるんだろう。


バカだなぁ。


せっかく橙輝のためを思っていたのに。


橙輝の喜ぶ顔が見られると思ったのに。








とぼとぼ帰り道を歩いていると、
見慣れた背中に会った。


バイクに乗っていたのは橙輝で、
ちょうど走り出すところだった。


「橙輝!」


大きな声で橙輝を呼ぶと、
橙輝は一瞬キョロキョロして、


それからあたしに気が付いた。


ヘルメットを取ってバイクから降りると、
驚いたような顔をしてあたしを見た。


「お前、何やってんの?今帰り?」


「うん!橙輝は?」


「俺は画材買いに来たとこ」


「今から?」


「ああ」


「あたしも行く!」


「いいけど」


画材の買い物なんて珍しい。


新しいスケッチブックでも買うのかな?


不思議とワクワクしていて、
あたしはすぐに橙輝の後ろに乗った。


バイクはすぐに発進して、
徐々にスピードを上げる。


あたしたちはそんなにしないうちに
画材屋さんについてしまった。




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