SKETCH BOOK
「ママたち、離婚するから」
「……はっ?」
夕食の時、お母さんはそう言った。
カボチャの煮物を
口に運ぼうとしたところで動きを止める。
お母さんは立ち上がって、
引き出しから一枚の紙を取り出した。
いわゆる「離婚届」ってやつ。
そこにはもう、お父さんの名も
お母さんの名も書かれていて、
ハンコが押されていた。
「梓は、どっちについていく?
もちろん、ママについてくるわよね?」
開いた口が塞がらないとはこういう事か。
お母さんは嬉しそうにあたしを見つめていた。
そんなの、急に言われたって分からないわよ。
喧嘩が続いているとは思っていたけれど、
まさか本当に離婚するなんて思わなかった。
「うん……」
とりあえず頷いておいた。
家のことをやってくれるのはお母さんだし、
第一お父さんとは中学を境に
あまり喋ることも少なくなったし、
ここはお母さんにくっついていたほうが
何かといいかもしれない。
なんて思いながら頷く。
するとお母さんはまた口を開いた。
「それでね、ママ、再婚するから」
「……は?なにそれ!」