あなたの命、課金しますか?
言い返すことができない。
その通りだからだ。
私もアプリで生まれ変わった。
【ブス】な自分を変えたくて、課命したんだ。
たとえ裕也がブサイクだったとしても、文句を言う資格はない。
「でももう、俺には願い事を叶えることができない」
「えっ?」
よく目を凝らしてみると、寿命の欄に【00:12】とある。
裕也の命はあと、12分ということだ。
それで納得した。
恐らく裕也は、願い事を叶え過ぎて寿命を失ったんだ。それなら、これまでの投げやりな態度も頷ける。
私を道連れにしようとしたことも、このせいだ。
「だから渚、一緒に死のう」
スマホを放り投げ、私の手を掴む。
「は、離して‼︎」
「もうお前と死ぬしかないんだ‼︎」
「い、今からでも寿命を増やせば__」
そこまで言って、口を噤(つぐ)む。
裕也は寿命の増やし方を知らないんだ。他人を登録して、寿命を奪い取ればいいことを知らない。でもそれを言ってしまうと、生き延びてしまう。
あと12分。
あと10程度で、三鷹裕也は【消える】はず。
それなら逃げ果せばいい。
自分自身の寿命は、その後また考えるとして、今は裕也から__。
「ちょっと、な、何してるの⁉︎」
私は叫んだ。
ポリタンクを逆さにし、頭から液体を浴びている裕也に向かって。