イジワルな彼は私を溺愛しています
あれから二週間。

私は和海との同居を続けている。

この二週間で、私はストレスから食べては吐きを繰り返して体重が五キロ減った。


和海は今家のソファに座ってパソコンのキーボードを叩いている。

私は台所に立って肉だんごスープを作っている。

お腹に優しいものなら食べられるかもしれないという希望をもって。


「できたよ」

「ああ」

和海がパソコンを閉じて言った。

スープをテーブルに置いて手を合わせる。

「今日はダンスの練習があったの」

和海の前では笑顔でいようと決めた。

だから私は自分から話しをふって会話をするように意識している。

そうでもしないと笑顔なんてすぐに消えてしまう。

「センスがないのか全く踊れないんだけど」

ダンスに関してはセンス云々の話じゃない。

この頃、ちゃんと食べてないせいですぐに息切れして、皆と動きを合わせようにも体が追いつかない。

「文化祭は見に行くぞ」

「見れるもんじゃないけどね」

スープを一口飲む。

……大丈夫そう。

「有紀、やっぱり何かあっただろ」

和海は一日一回そう聞いてくる。

「何にもないけど?」

「もうそれは通用しないから」

和海が顔を近づけてきた。

「この頃食べたらすぐ吐くし、寝れてないだろ」

「そんなことない」

「昨日の夜トイレの中にゲロあったぞ」

「え?流したけど」

…………あ。

「やっぱりな。白状しろ」

「ちょっと体調が悪いだけ」

「ちょっとでそんなになるわけないだろ。今だって無理して笑ってるのも分かる」

「無理なんてしてないから」

「俺に話せないことなのか?」

話したら終わってしまう。

「話すようなこと無いし」

「嘘つくのやめろ」

「……っ」

王様の声。

けれど、そこに悲しみも混じっている気がする。
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