ツンデレ黒王子のわんこ姫
「た、健琉さん、こっちを見ないで下さい」

「やだよ、芽以と同じお風呂にいて、離れて入るなんで馬鹿だろ」

2時間後、健琉と芽以は由布岳を一望する旅館自慢の家族風呂にいた。

家族風呂とは言っても、大人が10人程度は入れそうな広い露天風呂だ。

離れにも露天風呂はついているが、見える景色が違うらしい。

「芽以、こっちに来いよ。ほら,,,」

お風呂の端に丸くなっていた芽以は、体に巻き付けたバスタオルをしっかりと握っておずおずと、健琉を見つめた。

ムダがなく締まった男らしい健琉の上半身裸が目に入り、芽以はパッと目を反らした。

生粋のお嬢様である芽以に、さすがの黒王子の健琉も結婚までは手を出さないと誓っていた。

もちろん、バスタオルを巻いているとはいえ、お互いの裸を見るのもこれが初めて。

「ほら、芽以は夫のいうことを聞かないつもりか?」

芽以はフルフルと首を振って、イソイソと健琉に近づいた。

真っ白で染み一つない綺麗な肌が、健琉の隣で恥ずかしそうに赤みを増す。

その様子に、健琉は堪らなくなって、芽以の唇をふさいだ。

みじろく芽以の肩を、唇を塞いだままで健琉が優しく撫でる。

「大丈夫。こんなところでこれ以上はしない。一緒に景色を楽しもう」

本当は、理性も吹っ飛びそうなほど分身は反応していたが、純粋な芽以には何もわかっていないだろう。

あからさまにホッとした様子の芽以に

「ここではな,,,」

とブラック健琉が囁いたのは聞こえていなかった。

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