甘い運命

1-40

大学2回生、19歳の時。

私はファーストフードの店でアルバイトをしていた。
そこにいた社員さんの、仁科さん。
イケメンさんだったと思う。三上さんよりはかなり落ちるけど。

この人何故か、私に構う。
流石に他の人がいるときには何もないけど、私と二人きりだったりすると、それはもう甘い言葉をかけてくるのだ。

『都ちゃん、可愛い』
『そういう気が利くとこ、好きだなぁ』
『都ちゃんといると、ホッとするよ。』

最初は警戒して流していた私も、だんだんと意識するようになり、やがて久しぶりに男の人を『好き』になったのに気がついた。

仁科さんも、最初は言葉だけだったのが、時々ボディタッチもしてくるようになり、私も好きになっていたのでそれを許していた。

───私は、付き合っていたのだと思っていた。

だから、キス、までは、した。

しかし、その後しばらくして、信じられない話を聞く。

それも、店長と仁科さんの会話で。


──私はその日、シフトに入っていなかった。
仁科さんの誕生日に、プレゼントを渡したくて、事務所に行ったのだ。

事務所の声は、廊下まで届いていた。

店長が何か言った後に、仁科さんが言ったのだ。

『…ええ、丁度3回目の結婚記念日あたりに、2人目が生まれます』
『そうか、楽しみだな。………』


後から知ったのだが、仁科さんは既婚者で、バイト先では有名な『処女キラー』なのだそうだ。

私が入った頃、ちょうど大規模な入れ代わりがあって、うちの店では誰もそれを知らなくて。
他店の友達にそれを聞いたのだ。


──はははっ、私ってば、簡単だ。
ちょっとカッコいい人の、甘い言葉に釣られて。


私には、恋愛相手を見極める目もない。


──だから。

────もう、そういうのは、いらない────
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