毒林檎がなくても
「お母さま——ええと、今のお母さまのことよ。今のお母さまはね、お父さまとご結婚なさるまで、きちんと自立してらしたからよ」


それは、お妃さまがずっとずっと恨まれているとばかり思っていた白雪姫なりの、拙い考察でした。


「今はもう、自立はお父さまの立場が許さないのだけれど、お母さまは本当にちゃんとしてらしたそうなの」


白雪姫は、ゆっくり言葉を選びながら、そんなふうに続けました。


「……謀反を疑われて没落したお家のご令嬢が、召使いもなしにたった一人で生きて、その才と学を頼りに王城勤めにまでなったのよ。本当に大変だったと思うわ。嫌味を言われなかったわけがないもの。意地悪をされなかったわけがないもの」


お妃さまの脳裏に、当時投げかけられた悪口が蘇りました。


理不尽で手ひどい、侮蔑的な言葉がたくさんありました。



「それでも一生懸命勤めていたら、ある日、お父さまに見初められたそうなの。お母さまはきっと、とても悔しかったと思うわ」


お妃さまは、今度は心ない言祝ぎの言葉をかけられるようになりました。


玉の輿を狙ったのだと言われることもありました。


おめでとうございます、お慶び申し上げますと言われる度に、きつく手を握りしめたものでした。
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