毒林檎がなくても
「それまでずっと勉学に励んで、お仕事も真面目になさっていたのよ。ようやく認められ始めてこれからっていうときに、それを取り上げるような立場の人と結婚しなければいけないだなんてひどすぎるわ」


当時のお妃さまは、断ることはできませんでした。


王族の愛の言葉は、相手によっては命令です。拝命以外にありえません。


身分の低い者は、どうしたって逆らえないのです。


「どうしても体面があって、お父さまよりもお母さまの方が聡明であるわけにはいかないの。お父さまの権威に傷をつけてはいけないのよ」


白雪姫も、ただ蝶よ花よと育てられました。


勉学は最低限、教養は際限なく。

政略結婚するはずの姫も、そこそこ頭がいい程度でいなければいけません。


「だから、お母さまは、お父さまを支え、口を慎み、いつも控えめであることを求められるわ」


ひどい仕打ちよね、と手の中の林檎を撫ぜた白雪姫に、お妃さまは何も言えなくなりました。
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