毒林檎がなくても
「わたしはお母さまを恨んでなんていないわ。憎んでもいないの。だって、わたしの本当のお母さまは病気で亡くなったってちゃんと知っているもの」


それは、お妃さまが初めて聞く、白雪姫の本心でした。


「昔から儚い人だったらしくてね、わたしを身もごったときにはもう、ずっとお体が悪かったそうなの。わたしを産んで一年経ったころに、ご病気で亡くなったと聞いているわ」


お父さまは大変なお仕事をしてらっしゃる方でね、多忙すぎて最後に間に合わなかったの。

だからわたしが看取ったんですって。


でもおかしいのよ、と白雪姫はちょっぴり苦く笑いました。


「いつのまにか、わたしの本当のお母さまを儚くしたのは今のお母さまだって噂が広まってしまって」


それは、困ったような微笑みでした。


「へい……いえ、お父さまは身内の欲目なしに大変権威のある方なのだけれど、噂によると、今のお母さまはその権威と財力にあやかりたいがために、わたしの本当のお母さまを暗殺して妻の座を奪い取ったのですって。そんなこと、あるはずないのに」

「どうしてそう言い切れるんだい?」


ひどいこじつけだわ、と独りごちた白雪姫に、お妃さまはびっくりして聞きました。


白雪姫がこれほどきちんと考えていることも、自分を恨んでいないことも、あまりに意外だったのです。


「あら、簡単よ」


白雪姫は穏やかに言いました。
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