毒林檎がなくても
「……わたし、お母さまのお部屋に入れていただいたことはないのだけれど」


白雪姫の独白は続きます。


「お母さま付きの側仕えがね、月に何度もたくさんの書物を運んでいるのを見たことがあって。無理を言って少し表紙を見せていただいたらね、物語から実用書まで、本当に多岐に渡っていたの。わたしが読めない言葉で書かれているものもあったわ」


白雪姫は政略結婚をすると、ほとんどそう決まっています。


外国に嫁いでも苦労しないように、周辺諸国の言語はもちろん、少し離れていても、大国や有力国の言語は幼いときから勉強してきました。


一国の王女ですから、王国最高の家庭教師がつきます。本人にやる気もあります。それでも読めない本となると、なかなか数が限られてくるのです。


「でもね、わたし、お父さまからは一度もお母さまが勉強熱心だなんてお話を伺ったことがないの」


お妃さまはわがままな方でした。

毎月毎月、公的には用途不明なまま、お妃さまのお金が、湯水のように本のために消えました。


「お父さまはきっとご存じないのね。お母さまは公にはしたくない……いえ、きっとできないのだと思うわ」


だからね、おばあさん。


「今のお母さまは、本当は仕方なくご結婚されただけで、権威にはあまり興味がないのではないかしら」


恨む理由なんて、わたしには何もないのよ。
< 12 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop