男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「……陛下、お話したいことが――」

「ロドルフから連絡はあるか?」

「えっ……」
 

先に話を出されてしまい、ミシェルは出ばなをくじかれる。


「い、いいえ」

「祖父は大事にしなければな」
 

クロードは書類を置き、お茶に口をつける。ミシェルは内心ハッと気づかされた。


(そうだ……私が女だといえば、おじいちゃんも罪に問われてしまう……)


「……はい」

「話とは?」
 

クロードの黒い瞳がミシェルの空色の瞳を捉える。


「い、いいえ……」
 

ミシェルは考えがまとまらず口ごもり俯く。そんなミシェルにクロードは小さく口元を緩めた。


「アベル、食事は執務室に運べ」
 

半分ほどお茶を飲んだクロードはジュストコールの裾を払い、優雅な所作でソファから立ちあがる。


「かしこまりました」
 

部屋を出て行くクロードの後姿を目にしながらミシェルは黙っていようと心に決めた。



「フランツ、陛下の食事の用意をしよう」


アベルは突っ立ったままのミシェルに声をかけた。アベルは一部始終、ミシェルの行動を見ていたが、国王になにを言いたかったのかあえて聞かなかった。


(私は知らないことにしなければ)


下手に聞いて女だと告白されては困る。


「はい!」
 

今朝会った時の顔は暗かったが、返事をした今のミシェルの顔は少し明るさが戻っていた。


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