男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
人の良さそうな年配の男は快諾してくれ、ミシェルを荷台に乗せてくれた。
 
彼は野菜を王城へ運んできた町の外れで農家を営んでいるという。
 
ミシェルが恐縮してお礼を言うと、農園に帰るには町を通らなければならないからと笑った。


(今日は町へ行くのに、楽が出来たし幸先いい感じ)

ミシェルはうららかな風を頬に楽しんでいた。


「町のどこで降ろそうか?」
 

馬の手綱を操りながら、年配の男性が振り返る。


「ぁ……町の中心にある広場まで乗せていってもらえますか?」

「もちろんだとも」
 

最初の目的地の宿は広場から少し行ったところにある。おかみさんが作る野菜スープはほっぺたが落ちそうなくらい美味しい。

それを目当てにやって来る者も多く、繁盛している。
 
しばらく荷台で揺れていると、町が見えてきた。
 
ミシェルが乗っている一頭立ての馬車が走っているのが多く見られる。
 
町の中央広場が見えてきた。中央広場に大きな噴水もある。人々は石造りの囲いに腰を下ろし、話をしたり、涼んだりと、ここは憩いの場でもあった。


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