今夜、シンデレラを奪いに
「そんな顔をしなくても、気になっていることは何でも説明します。」


「や、あの、隠そうとしてたの知ってるし…………」


「正直、透子の行動力をみくびっていました。これ以上あなたに心配をかけるのは本意ではありませんから、順を追って説明しますよ。」


静かに語る真嶋の声を聞いて、コーヒーを持つ手を握り直した。


「外ではできない話題もあるのでこのまま車内で話しましょう。なので行き先はどこでも良いのですが透子はどこか行きたい所はありますか?」


デートみたいなことを聞かれて、妙な気持ちになって目が泳いだ。特に意味のない目的地を聞かれただけなのに喜ぶなんて、私ときたら馬鹿みたいだ。


「………それなら大きな観覧車のあるとこがいい。横浜でも千葉でも。」


「了解です。可愛いオーダーですね」


「どっちに行くにしてもわりと遠いでしょ。私だって真嶋には山ほど説教があるんだから、長いドライブじゃないと時間が足りないの。」


「怖いですよ」と真嶋が笑った。優しい笑顔は大人びていて、その分存在が遠くなったように感じて不安になる。


「どこから話したら良いものか悩みますが、まずは透子が知っている人物からにしましょうか。

先程、部長はどう見えました?」


「部長?えっと……残念な感じっていうのかな。大事な話ではかやの外にいるなって思った。」


「その通り。部長はその愚かさゆえに、首謀者にとっては大変都合のいい捨て駒でした。

派手な裏工作も、いざとなれば全てを彼に押し付ける予定だったからできたことです。そのため、普通に捜査のメスを入れたのでは彼より上の人物を捉えきれない恐れがありました。」


「それなら今回の捜査は、普通のやり方じゃなかったということなの?」


「はい。分かりやすく人事に真嶋の名前を公開してこの部署に赴任したのがそうです。

派手に動くことで、俺の名前に心当たりのある人物がどういう行動に出るかを見定めるため」


「真嶋の名前に心当たりのある人?」


「エヴァー社内では少ないですが、オーク財閥全体というと話は別です。」


真嶋は私に、羽織っているジャケットの胸ポケットを見るように言った。触ると名刺入れが入っている。促されるまま中を開けると、三種類の名刺が入っていた。


ひとつは、さっき投げてた副社長の名刺。もうひとつは、企画営業課の平社員の名刺。この二つはエヴァーグリーンインフォテクノロジーのものだ。


最後のひとつは「オーク財団 監査役」と書いてあった。


「兼務していますが今はこちらが主な役割です。分かりやすく言うと不祥事の始末ですね」
< 104 / 125 >

この作品をシェア

pagetop